地震に強い家を建てよう!土地の選び方や家づくりについて

地震大国といわれる日本で家を建てる場合、地震に強い家を建てる必要があります。そのためには住宅の構造や耐震性能に注意しなければならないのはもちろん、土地選びにも気を配らなければなりません。そこで、この記事では日本における地震被害の概要を紹介するとともに、地震に強い家を建てるための土地選びと家づくりについて詳しく解説します。
日本の地震被害について
世界有数の地震大国といわれる日本では、過去にさまざまな地震被害が発生しています。地震の発生はひとつのエリアにとどまりません。この段落では、過去に大きな被害をもたらした地震について、代表的なものを紹介します。
#関東大震災
1923年(大正12年)の9月1日、午後12時過ぎに発生した関東大震災は、当時すでに近代化されていた首都の東京を中心に南関東から東海地方まで、広い範囲で被害が発生しました。震源付近は震度7を計測し、地盤の弱い場所では離れていても震度6だった箇所が多くあります。死者は10万人を超え、倒壊や地震後の火災での消失、土砂災害により倒壊した家屋は30万棟に迫る数です。
#阪神・淡路大震災
1995年(平成7年)の1月17日には兵庫県の淡路島北部を震源とする阪神・淡路大震災が発生しました。地震の規模がマグニチュード7.3の直下型地震で、神戸市を中心とした阪神地域の大都市でも大きな影響が出ました。死者は6000人を超え、住宅は10万棟以上が全壊、14万棟以上が半壊するという被害が発生したのです。
#東日本大震災
2011年(平成24年)の3月11日には三陸沖を震源とする東日本大震災が発生しました。マグニチュード9.0の巨大地震であり、日本国内では観測史上最大規模です。震度7や震度6強を観測した場所も多く、地震の揺れによる被害が多数発生したことに加え、10m前後の津波が襲来したことによる被害が大きかったことも記憶に新しいでしょう。首都圏でも交通機関の乱れで帰宅困難者が多数出たり、液状化が発生したりなど、広範囲で被害が発生しました。死者が約1万5000人を数え、いまだに行方がわからない人も約7500人となっています。
#2016年以降の地震
2016年4月の熊本地震では4月14日にマグニチュード6.5、4月16日にマグニチュード7.3の地震が発生しました。どちらも最大震度は7で、全壊家屋は8000棟以上、半壊家屋は3万4000棟以上にのぼり、熊本のシンボルである熊本城にも大きな被害が出ました。2018年には6月18日に大阪北部地震、9月6日には北海道胆振東部地震が発生しています。
日本ではこれまでおおよそ100~150年の間隔で南海トラフ地震が発生しています。前回発生したのは1944年の昭和東南海地震及び、1946年の昭和南海地震です。これらの地震の発生からすでに70年以上が経過していることもあり、次の地震に対する備えが叫ばれています。ここまでみてきたように、日本国内ではどこで大きな地震が発生してもおかしくありません。そのため、家を建てる際の地震対策は必要不可欠です。
耐震性能の基準とは?
住宅の性能がどの程度なのか、一般の消費者にはなかなか詳しいことはわかりません。そこで住宅の性能について明確に表示し、その性能を保証するために制定された法律として「品確法」があります。耐震等級はこの品確法によって定められた住宅性能を表す指標です。耐震等級は1~3までの3段階があり、数字が大きいランクの方が性能が高くなっています。
#耐震等級1
耐震等級1は建築基準法で定められている最低限の耐震性能を有していることを示すレベルと同程度で、耐震性能としてはまずこのレベルが基本になります。具体的には数百年に一度起こる地震でも倒壊や崩壊しない、数十年に一度の規模の地震では損傷しない程度です。数百年に一度起こる地震については倒壊や崩壊はしないとされているものの、損傷を受ける可能性については、完全には否定されていません。もし震度7や震度6強の揺れが発生した阪神・淡路大震災や熊本地震レベルの地震が起こった場合、ある程度の被害は出る可能性があります。建物に被害がでれば修理が必要になるのはもちろん、損傷の程度によっては建て替えなければならないケースもあり得るでしょう。
#耐震等級2
耐震等級2は基本である耐震等級1の1.25倍の耐震性能があるレベルです。つまり、数百年に一度発生するような震度6強や震度7程度の地震より、さらに1.25倍の規模の地震が起こっても倒壊や崩壊しないとされています。住宅を建築する際に「長期優良住宅」としての認定を受けようとする場合、耐震性の基準では耐震等級2以上の強度がなければなりません。また、学校や病院などの災害時に避難場所として指定される公共施設に対しても、耐震等級2以上が求められます。
#耐震等級3
耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の地震に耐える強度で、品確法で定められる住宅性能表示制度のなかでは最も高いレベルをクリアしている水準です。巨大地震が発生するときは、本震以外に何度も大きな余震が起こることも珍しくありません。一度の揺れで倒壊や崩壊が起きなくても、複数の大きな揺れで建物にダメージを受けるリスクはあります。熊本地震では震度7の揺れが2度発生しましたが、耐震等級3の建物は倒壊せずに残ったものが多いことが調査で明らかにされました。災害発生時に救護活動や復旧の拠点としての役割を担う警察署や消防署は、この耐震等級3の強度が求められます。
地震に強い住宅の構造
数々の地震による災害を経験してきた日本では、建物の耐震性を高めるための技術も日々進歩してきました。現代では地震に強い住宅の構造として、主に「耐震構造」と「制震構造」および「免震構造」の3種類があります。
#耐震構造
耐震構造は柱や梁、壁など建物の構造を支える部分自体を強固に造り、倒壊しないようにしている構造です。金具で補強したり筋交いを入れたりなど、地震の揺れに耐えうる補強を施しています。建物の構造部がしなるように造られる柔構造もありますが、他の構造に比べると揺れを減少させる効果は大きくありません。そのために建物内には地震の揺れが伝わり、家具などが倒れるリスクがあります。1981年以降の新耐震基準が施行されたあとに建築された建物のなかでは一般的な構造です。
#制震構造
制震構造は建物の内部に地震の揺れを吸収する制震壁や制震ダンパーなどを入れて建てている構造です。地震の揺れは耐震構造に比べて70~80%軽減し、壁のひび割れなどの損傷も抑えられるといわれています。揺れを軽減できる利点を生かし、特に上層階の揺れを抑えたい高層ビルを建てる際に採用されている構造です。次に説明する免震構造に比べ、建築にかかる費用が抑えられます。
#免震構造
免震構造では建物の基礎と建物が直接つながっておらず、間に積層ゴムなどを用いた免震装置を設置しています。地震が発生した際、免震装置が揺れを吸収することで建物には直接伝わらない仕組みです。制震構造と同様に高層ビルの建築に採用され、耐震構造に比べて3分の1から半分以下まで揺れが軽減されるといわれています。そのため室内の家具が転倒するリスクは耐震構造の建物よりもかなり減ります。
耐力壁がバランスよく配置されているか?偏心率について
建物には質量の中心である「重心」のほかに、強度の中心となる「剛心」と呼ばれるポイントもあります。この重心と剛心の離れ具合が偏心率です。地震が発生すれば、その力は重心に最も多く集まります。一方で地震が起こす振動や揺れによる負荷が最も多く集まるのは剛心です。このズレによって水平方向の揺れや剛心を中心として回転する動きが発生し、建物にねじれが生じます。偏心率が大きいほど建物に対する負担が大きくなるため、耐力壁がバランスよく配置された家を造ることが地震による揺れにくさにつながります。
耐震構造自体はしっかりした家であっても、偏心率が高い場合は考えているほどの耐震性が得られていないことも考えられます。そのため、高さ13m超または軒の高さ9m超の木造建築物を建築する際には偏心率の制限が設けられており、それをクリアする家でなければなりません。
耐震性だけでなく、地盤のゆれやすさにも注意!
地震に強い家を建てるためには、建物の強度や耐震性を考えるだけではなく、土台となる地盤にも目を向けることが重要です。まずは地方自治体で公開されているハザードマップを活用し、家を建てようとしている場所の地盤が揺れやすい性質かどうかなどを調査するようにしましょう。ハザードマップには災害が発生したときの危険度や被害予測などが示されているため、災害に強い土地かどうかをある程度把握することができます。
家を建築する際、地震に強い構造や耐震等級3の強さを備えていることはもちろん大切ですが、偏心率も踏まえた耐震性を備えた建物であることが大事です。それに加え、本当に地震に強い家を建てるためには、揺れにくい地盤の上に建てることも重要なポイントになります。
地盤調査と地盤改良が重要!
ハザードマップで、ある程度は地盤の状況を知ることができますが、一見しただけでは確実なことはわかりません。より詳しい地盤の状況を知るためには地盤調査が必要です。固い地盤は地震が発生した際の安心度が高く、地盤改良の必要がありません。一方で粘土や砂が多い柔らかい地盤は、地震発生時に家の傾きが発生したり、液状化したりするリスクがあります。もし調査をした結果、やわらかい地盤だった場合は地盤改良が必要です。
地盤改良の方法は主に3つあり、そのひとつが「表層改良工法」です。柔らかい部分が浅い場合に用いられる方法で、セメントを使って地表部分を固めます。2つ目の方法は「柱状改良工法」です。柔らかい地盤が地中2~8m程度の場合に用いられ、円柱状に掘った穴にセメントを入れて固い地盤を造り、地盤を強化します。残りのひとつ「鋼管抗工法」は、地中の深いところにある固い地盤まで鋼管の杭を打ち込むことで建物を安定させる方法です。地中30mまでの工事が可能で工期が短く、大型の重機を持ち込めない場所でも工事ができます。
まとめ
地震に強い構造には耐震構造と制震構造、免震構造の3種類があるうえ、耐震性能にも耐震等級が1~3までのランクがあります。そもそも家を建てる土台となる地盤についても考える必要があり、地震に強い家を建てるために検討すべき要素はいろいろあります。地盤特性から考える家づくりを検討している方は、地盤の調査や解析、住宅事業までを手がける「地盤ネット」にお任せください。